2012.07.04 コラム

日本から始まる人類の黄金時代

終わりの見えないユーロ危機、政権争いに翻弄される日本の政治、今の時代は国家が方向性を見失い、誰もがどこへ向かって、どのように生きればよいのか、答えを出しづらい時代です。そんな時代においてもなお、私は日本から人類の黄金時代が始まることを1ミリも疑っていません。

そう言い切ることができるのは、この時代の流れを診断できているからです。医師が処方箋を出す際には診断が必要なように、今の時代のどこが病んでいて、その原因が何なのかを明確に診断することができれば、この時代と文明の向かうべき方向性も明確に定まります。

21世紀は心の時代と言われますが、国内を見てもこの60年間で肉体労働から精神労働の時代へと移り変わってきました。営業や企画、事務、接客業、サービス業などの3次産業においては働く人の人間力、人間関係力が重要視され、大学でも就職前に人間力を養うことが求められています。

近代社会において成功を収めた3つのモデルは、ドイツの社会システム、アメリカの利益創出モデル、そして人間関係で戦後の復興を成し遂げた日本のモデルです。ですから、人間力、人間関係力が重視される21世紀「心の時代」は、日本の時代の幕開けでもあるのです。

現代は、世界人口の1%に過ぎない人が世界の富の約40%を有しており、99%の持たざる人類は1%の既得権に抵抗できない社会になっています。昨年、ウォールストリートで起きたデモを機に、この1%:99%の勢力が正面衝突を始め、そのムーブメントは世界各国へと伝播されていきました。今の地球上において主導権を握っているのは1%の勢力ですが、これが21世紀にはひっくり返されるようになります。これからお金と人間の価値勝負がスタートするのです。

皆さんは、人間とお金のどちらに価値があると思いますか?

多くの方が「人間」と答えられますが、本当にそうでしょうか。人間は酷い生き物です。お金のために人を殺すのが人間です。戦争も起こします。人を騙し、相手の物を奪い、人を傷つけ、尊厳性を殺して、奴隷のように支配しているのが、今この地球上で人間が行っている営みです。

このような状態のままの人間に、本当に価値を認められるでしょうか?
人間はお金の価値に勝つことができるのでしょうか?

お金は無限大蓄積することができます。知り合いを無限に増やすのは人生の有限な時間を考えると難しいことですし、信頼のおける友人となるとさらに数は限られてきます。しかし、金融市場においてレバレッジを効かせるヘッジファンドは、たった1日で数兆円に上る利益を稼ぐことも珍しくありません。投資に勝ち続けることができれば、短い期間でも莫大な富を蓄積することは可能です。

また、人に何か頼むには時間をかけて関係性を構築する必要がありますが、お金があればその時間も要りませんし、スピードも速いのです。たとえば「○○してくれたら100万円あげる」と言われれば、頼みごとを聞こうとするのが人間です。今の経済や仕事はそのようにしてお金の関係性で成り立っています。

また、中国が稼ぐようになって各国とのパワーバランスが変わってきたように、お金は未来を決定する強烈な力も有しています。巨額のマネーで国債を買い支える一方で、政治的な要求を相手に飲ませ、アフリカなどの途上国においては、自国の政策・意思を貫き通すことにも成功しています。

お金は無限に蓄積することができ、スピードが半端ではありません。そして、未来を決定する強烈な力まで有しています。そんなお金に、果たして人間が勝てるのでしょうか?

人間は裏切りますが、お金は裏切りません。どれだけ多くの友人や仲間がいても、考え方や価値観が違うので長続きさせることは難しく、何かのきっかけで組織が分裂することも珍しくありません。条件・状況・環境が変われば変化するのが人の心です。しかしお金は離れて行きません。未来を決定する力を持っているのも人間ではなくてお金です。だから生きる意味や価値を追求することより、お金を追求する世の中になってしまったのです。今までの人間のレベルでは、お金に人間が勝てる道はないのです。

理想を現実化させるために、人間ではなくお金を中心にするのがいい、それが資本主義です。

資本主義を一言で表すと「循環」です。宇宙自然のあらゆるものは循環しています。言い方を変えれば売買しています。自分の中にあるものを外にあげること、これが売買(循環)の定義です。封建時代の売買は、人格まで販売していました。多くの民が王様の奴隷として戦争の道具にされ、戦争に勝てばまた多くの奴隷を得ることができる時代でした。王様を中心に国家を形成して、戦争を通じて領土を広げることが一番経済的に利潤や富を蓄積するメジャーな生き方だったのです。

その後、人格まで売買する奴隷市場の残酷さを見かねた良心のある人たちが奴隷解放運動まで起こして時代は変わりました。社会の一番端に位置する人たちが中心に来る革命が、歴史では繰り返し起きています。

近代革命を通して農業社会から産業社会へ移行するときに、封建時代の反省を踏まえて資本主義社会では人格の売買を禁じるようになりました。

資本主義・市場主義の発展に伴って人間のライフスタイルも変化してきましたが、需要と供給によって値段が決定される市場主義のメリットとは一体何でしょうか?

市場主義の一番の素晴らしさは、資源の効率的な分配が可能なことです。地球上の多様な物質も資源ですが、人間の創造性や能力も人的資源と捉えられます。これらの資源を偏らせることなく、効率的に必要とされる場所へ分配ができるようになった結果、人類の文明はまた一歩進化しました。戦争が少なくなったのです。通貨戦争や貿易戦争など形を変えて争ってはいるものの、人が人を殺す争いから、新しい物商品を創って人間の体を便利にさせる方向へと力が注がれるようになり、人々の暮らしはどんどん便利になっていきました。

そこで発達したのが民主主義です。市場主義によって資源の効率的な分配が可能になり、戦争に使われていたエネルギーがもっといい商品を創ろうという方向性へと向けられた結果、産業革命発祥の地であったイギリスから民主主義が発展し、世界へと広がっていきました。

しかし、そこには大きな問題もあります。

市場が成り立つためには需要側と供給側の勢力の、力の均衡がとれていることが重要です。需要がないところに商品が供給されれば売れ残りが大量発生して経済にも環境にも良くありませんし、需要があるのに商品が供給されなければ不平・不満が広がり、市場の良さを活かし切れていないことになります。需要と供給の力のバランスが対等になることが、市場の成立には必要なのです。

ところが、そのバランスを意図的に壊したのがレーガン(米)とサッチャー(英)の両大統領です。労働組合を弾圧し、一番勢力のあった組合を撲滅した結果、資本を供給する側がパワーを持つようになりました。モノを創って消費者を感動さえ、価値を提供する産業資本より、お金がお金を生む金融資本の勢力が大きくなっていったのです。

その結果、金融や資本の供給過剰な状態を生み出し、需要を創る為に植民地を開拓し、金融機関を創りました。消費者に需要がないのは消費できるだけのお金がないからだと規定し、消費者が稼ぐ能力を上げる政策ではなく、消費力を育てるために「お金を貸してあげるから消費しなさい」といわんばかりの政策を連ね、宣伝・扇動にも力を入れます。テレビや雑誌を通して、不必要な欲求まで扇動しなければなりません。消費者は、メディア・大企業によって造られた欲求に従って消費することを洗脳されます。

しかし、給料が増える訳ではないのにお金を借りて消費をしたら、利息も支払わないといけないので消費者心理は不安になっていきます。所得と消費のアンバランスに対する不安感をなくして、もっと消費させようと考えた供給側の勢力が考えたのが、家や不動産の価値が上がるように誘導することでした。

家や土地を持っていれば、毎日寝ていても価値が上がっていくという幻想を生み出したのです。自分の給料が高くなったり、自分の価値や能力が高くなった訳でもないのに、なんの努力もしなくても自宅と不動産の価値が上がって自分の資産も増えると思えば、誰もが安心して消費をするようになります。

その結果起きたのが、資産バブル、不動産バブルです。サブプライムローンの問題に端を発したリーマンショックの影響で、一夜にして自分の資産価値が暴落していきます。1億円の資産があると思って消費を楽しんでいたのに、実は100万円しか持っていなかったと気付かされた大ショックと共に、夢と希望も破壊されたのです。

夢と希望が破壊されると、何が起きるでしょうか?

人として生きる意味・価値を失うのです。エンジンの火が消えた車のように、生きるエンジンが消えて、もう頑張れなくなってしまいます。家を持てば価値が上がって資産家になり、株や投資で儲けて幸せになれると夢見ていたのに、金融バブルで社会の仕組みも金融システムも信頼できないと多くの人が感じれば、生きるエンジンは消えてしまいます。不信や不安が社会に蔓延し、未来の希望や夢を持つことができず、生きる意味や価値も見出せない状態では、結婚もしませんし、少子高齢化も進んでいきます。

世界は今、バブルの崩壊、すなわち信頼システムが崩壊している状態です。

今の世界危機の中で、国家は金融支配権力の道具になってしまっています。金融機関の株式を持つ政治家の人も多く、民間企業のFRBの株主は、アメリカの利益ではなく自分たちの利益のためにFRBの政策を動かしています。国家は金融支配権力の道具となり下がり、個人もお金の奴隷にされて、借金地獄まで作って、お金を稼ぐための道具として人間を使う組織の多い現実を、皆さんは悲惨で、残酷で、屈辱なことだとは感じないでしょうか。

中産階級はどの国でも崩壊して、1%対99%の戦いが始まっています。

そんな中、ユーロ諸国がやっていることは、お金の点滴を打つかのような政策ばかりです。EU加盟国から集めた資金をギリシャに投入して景気を活性化させようとしていますが、本質的に経済発展させる方法は2つしかありません。

それは、「生産要素」と「生産性(生産力)」です。

生産要素はお金、資本、土地、資源などです。生産力(生産性)を高めるのは、人間のアイデアや技術です。人との疎通交流が活性化することで無限のやる気・アイデア・イメージ・創造性が生まれてきます。この生産力(生産性)によって経済がどんどん発展するようになるのが一番良いのですが、今の中国も生産要素であるお金の力で走っている状態で、この世界経済の危機に対して明確な代案や方向性を示せている国はありません。

これは、「労働力」と「資本」のアンバランス、「お金」と「人間」のアンバランスが起きている状態です。

人間は裏切ります。奴隷のように所有していても裏切るのに、奴隷ではない現代人はなおさらです。100億円のお金は裏切りませんが、100万の人がいても、みんな判断基準は違いますし、エゴも強いので、統制する力のない状態では簡単に裏切ります。実際、あなたの周りで給料や資産をがんばって増やそうとする人と、友達や仲間を一生懸命増やそうとする人のどちらが多いでしょうか?お金と人間の価値戦争において、人間が完璧に負けている状態と言えるのです。

この状態を、このまま放って置いてよいのでしょうか?

私たちは、支配階級の道具になっている国家を取り戻さなければなりません。人間一人ひとりの尊厳性に貢献できる国を創らなければならないのです。それを観術では「フィールド国家」と呼んでいます。最新刊の「観術で生かす日本の和心」にも書いていますが、私は悟りの教育を通して、人間の第二の誕生(精神の誕生)を起こし、「体人間」から「心人間」へと身分上昇させ、本来の人間の尊厳性を確認できるフィールド国家を創りたいと願っています。

人類に強烈なプレゼントを遺してくれたスティーブ・ジョブスは、スマートフォンという道具を与えて、人間一人ひとりの可能性を開かせようとしました。

私は、誰もが悟りを当たり前に理解できる新しい言語として「イメージ言語」を開発しました。これからの時代は、機械ではなく人間そのものをバージョンアップさせる時代になるのです。悟りの教育によって、人間一人ひとりの人間力・人間関係力を高め、世界に求められる憧れの職業を創出しながら、「和の産業化・悟りの産業化」を通して、日本から人類の黄金時代を創建することができるのです。

人間の尊厳性を確認できるフィールド国家日本を創建しながら、21世紀、愛と信頼が溢れる本当の意味の心の時代を皆さんと共に創っていきたいと願っています。

科学を超えるスーパーサイエンスである「日本哲学」を生み出すことができる観術の「イメージ言語」を、ぜひ多くの方に知っていただきたいと思っています。

Noh Jesu