こんにちは、Noh Jesuオフィシャルブログ編集部です。
シリーズでお届けしております「サピエンス全史・ホモ・デウスから観る、人類の今までとこれから」も今回で3回目となりました。今回も書籍の中の重要なポイントや、書籍には書かれていない、nTech(エヌテック)ならではの解析を織り交ぜながらお話しを伺います。
前回のテーマは「ホモ・サピエンスが地球を征服した後、どのような統合秩序システムをつくり維持したのか?」でした。サピエンスは虚構を生み出すことによって統合秩序を進化させて宗教・帝国・貨幣という3大虚構をつくることによって、人類の統合秩序システムを進化させ、結集力が増したことをお伝えしました。
シリーズ3回目は、地球の覇者となったホモ・サピエンスが、その支配力を喪失していくプロセスについてお話を伺います。
編集部:このシリーズも折返し地点を迎えました。今回もよろしくお願いします。
Noh:はい、よろしくお願いします。まず、今回の重要なキーワードを一言でいうと「過去の成功が未来の失敗につながる」ということです。
編集部:わかるような、わからないような…。もう少し具体的にお願いします。
Noh:はい。歴史を振り返ってみるとわかりやすいですね。例えば、過去の戦争で日本はロシアに艦隊決戦で勝ちました。この大成功があったから、同じようにアメリカにも艦隊決戦で勝とうとして、結果的に大失敗になる原因となりました。私は、戦争反対派ですが、もし、違う戦略を選択していたら実はアメリカにも十分勝てるチャンスがあったのです。
編集部:なるほど。過去の成功が未来の失敗につながるということは初めて聞いたのでとても興味深い観点でした。しかし、過去の成功にこだわらなければ、アメリカにも十分勝てるチャンスがあったという話は、とても驚きです。次回、機会があれば話していただくとして 、今シリーズと過去の成功の話をさっそく伺いたいと思います。
Noh:はい。それでは、さっそく本題に入りたいと思います。
今回は、過去のシリーズ②までの内容の理解の上に成り立っていますのでシリーズ②までを
の見出しで振り返り、前回までの振り返りをせずにすぐにシリーズ③の内容を読みたい方は
から始めていただけると助かります。
編集部:前回までの内容もかなり難解な部分がありましたので、いままでをまとめていただけると助かります。
そして、今回の内容も折り返し部分の重要なパートなのでかなり深く多くなりそうですね。
Noh:はい。今シリーズの理解ができると『サピエンス全史』、『ホモ・デウス』シリーズ合計4冊の内容がすっきりと整理できますよ。
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まず最初に理解していくポイントは、ホモ・サピエンスが地球の覇者になれたのは、一言でいえば「力の結集」ができたからということです。どうしても現代を生きる私たちは、“人類は一種類しか存在しない”と錯覚しがちですが、実は他にも多くのホモ属が存在していた中で最終的にはすべてのホモ属が淘汰されて、ホモ・サピエンスだけが地球の覇者になったのです。
そして、そのホモ・サピエンスによる地球征服を可能にしたのが「虚構」でしたね。
つまり「虚構」によって地球の覇者になったホモ・サピエンスが、今度は「虚構」によってその力すべてを失うということです。それを理解する前に、まず「虚構」についておさらいしてみましょう。
編集部:やはり「虚構」が重要なキーワードになってくるのですね。書籍にも「虚構」は、重要なキーワードであり、新しい思考と意思疎通の方法の登場と書かれていました。ただ、その原因が何だったのかはわからない、たまたま遺伝子に突然変異が起こって 、その結果、脳内の配線が変って新しい種類の言語で意思疎通ができたまったくの偶然だったと書いてありました。
Noh:そうですね。何万年も前のことなので分析による原因確認は無理だったとしても、それがどのような流れで結果までに至ったのかは十分、解析することができます。
nTech(エヌテック)では、その役割に関係したのが「火」の使用であり、それによって脳内の配線が変わってこれまでになかったまったく新しい種類の言語を話せるようになったと解析しています。
編集部:たしかに書籍にもホモ・エレクトス、ネアンデルタール人、ホモ・サピエンスの祖先が日常的に火を使っていたと書かれていますね。ただ、その中でなぜ、ホモ・サピエンスだけが…、という部分はどこにも書かれていません。
Noh:はい。nTechでは、すべてを「HITOTSUの源泉的な動き」から解析するので情報や現象をつなぎ合わせ、このような方向性でこうなったと原因から結果までの流れをスムーズに理解することができます。なぜ、サピエンスだけが新しい言語が話せるようになったかについての解析もあるのですが、話が長くなるため、またの機会に譲って、その虚構からどのようにして統合秩序を進化させていったのかを軽くおさらいしてみましょう。
編集部:それは、とても楽しみですね。個人的には、なぜホモ・サピエンスだけが…、解析もぜひお聞きしたいです。
Noh:はい。まず、ホモ・サピエンスは、約3~7万年前の間に起こった認知革命によって、他のホモ属と違い、伝説や神話、宗教を起こすことができました。これは、現実に存在しない架空の事物について語れる虚構の能力があったからで、この虚構が他のホモ属と一線を引くきっかけになったのです。
編集部:そうでしたね。書籍にも 、ありえないことを朝飯前に信じられるのは、ホモ・サピエンスだけだと書いてありました。もし、これが、サルが相手では、死後、天国でいくらでもバナナを食べられると話したところで目の前のバナナを譲ってもらえない、という例がわかりやすかったのを覚えています。
Noh:そうです。この虚構によって力(=人)の結集に成功し、それがいろいろな信仰や宗教に発展していくわけです。そして、時がたつと共にその思考方式も強化され、神にすべてを捧げることで天国へのチケット(免罪符)を手にできると信じるようになります。この状態では、自己の概念もなく、自他を分けることもなく、“神のために”という「目的論的世界観(for)」で、神の名のもとに結集させることが可能になりました。
編集部:サピエンスが地球の覇者になり、さらに力の結集を行っていた中世時代ですね。
Noh:はい。神という虚構をもとに結集していたところ、神の絶対性が揺らぐ事件(天動説から地動説、新大陸発見など)が起こります。この「集団的無知」を認めたサピエンスが新たな発見を求め、科学革命につながります。神(宗教)の時代は人間と社会は一体でしたが、ここにきて人間と社会が分離して主体が生まれます。
そこで数学、物理学、経済学などの合理的理性や客観的理性といった科学的真理(by)の探求が急速に発展します。これらの発展が、のちの未来の発展をもたらすと世の中に浸透することで、未来への信用が生じ、先行投資につながりました。そこで経済成長が起き、宗教にも勝る統合機能として帝国が強化されたのです。
編集部:人間への信用が広がったことが、自由主義や個人主義、資本主義などの帝国の誕生につながったのですね。
Noh:そうですね。そして、現在、もっとも信頼と統合を得ているのが貨幣です。なぜなら、どんな商品やサービスとも交換でき、国や宗教、人種、性別、性的思考などのあらゆる違いも差別しない、普遍的原理を持つからです。
編集部:ホモ・サピエンスが地球の 覇者になった後、どのようにして現代まで進化発展させてきたのかという流れがわかりました。では、虚構によりお互いが信頼し、それにより統合するならば、 今後、どんな虚構をつくり出していくのかが、これからの人類のカギになりそうですね。
Noh:まさしくその通りです。裏を返せば「信頼=統合」ですから、信頼を失う、あるいは、統合へ向けてのこれまでの方向性が限界に達しているということであれば、統合秩序が破壊するという危険もあります。のちほど述べますが、そのためにこれまでの進化発展の流れにない、まったく新しい革命を起こさなければ、人類を統合(=人類の進化発展)ができないという危機感を持っている学者も多くいます。
編集部:なるほど。では、これまでの人類を進歩発展させてきた虚構が、現在 どのような状態だから力を失い、今後どのように進化発展していかなければならないのでしょうか?
Noh:はい。まず、いまの現状を正確に知るためには「虚構」によって人類を発展させてきた宗教と科学をどう解析していくのかが重要になってきます。
編集部:なるほど。書籍にも「科学と宗教というおかしな夫婦」と題したいろいろな例が出ていました。例えば、中国の皇帝は何千年も努力したのに、結局、 飢饉と疫病と戦争を克服できなかったが、近代社会は、数世紀でやってのけた。これは神話を捨てて客観的な科学知識を採用した成果ではないか?と語る一方で、科学は 実用的な制度を創出するために宗教の助けを必要とする、と書かれています。
Noh:そうですね。この解析自体が、一般的には難しいものですが、nTech(エヌテック)では次のように解析しています。宗教は、持続可能な維持を発展させていくものです。 そこには意味が大切であり必要です。そこで活用するのが「虚構」というわけだったのです。このようにして、宗教の社会秩序を維持してきたのです。
編集部:なるほど。そう解析すれば、いままでの宗教の発展も理解できます。
Noh:はい。一方、科学は、意味価値を放棄して真理を追究します。力を活用して、物理法則を明らかにし、食糧問題や病気を解決したり、戦争の道具として領土を拡張したりすることに寄与します。
すなわち、
神とは何なのか?
時間が生まれる前に何があったのか?
永遠不変がどういうことなのか?
その永遠不変から現実の変化はどうやっておこるのだろうか?
など事物と事物の関係の間に潜む力を解明することを追究(執着)するのです。
ただ、残念なことに力を追求するので、どうしても戦争の道具として利用されやすいのです。それが人類共生の方向に働くと、 菌を殺して病気を治療するなどになります。
編集部:非常にわかりやすいです。書籍中にあった「科学者は世界がどう機能するのかを研究するが、人間がどう行動するべきかを決めるための科学的手法はない。科学は、人間は、酸素がないと生き延びられないことを教えてくれるが、犯罪者を窒息させて処刑するのは許されるのかについてどう答えたらいいのかわからず、宗教だけが必要な指針を提供してくれる 」という部分が腑に落ちました。
Noh:そうですね。科学は、力を追究して意味や価値自体を放棄してしまったので 、科学では意味や価値について答えることができず、宗教にゆだねてしまうしかないのです。
また、メカニズム的にみれば、どう機能するのかはByで表せます。そして、どう行動するべきかについては、そこに意味や価値が必要になるのでForで表すことができます。
つまり、科学はBy、宗教はFor。では、Ofは何かというと真理(美学)と表すことができます。このOf、By、Forの3つを統合していくことがこれから求められていくものになるのです。
ここでぶっちゃけの話になりますが、ユヴァル・ノア・ハラリさん(以下、敬称略)の思考方式の限界を言ってしまうと、虚構に対するDefine(規定)があいまいであることです。
宗教・帝国・貨幣を虚構のシンボルで言っていますが、
・科学も虚構であること、
・因果論理自体が虚構であること、
・因果論理を成り立たせている1:1の対称性自体が虚構であること
・主語と述語で現象を理解することも虚構であること
この虚構の拡大解析が必要です。
条件づけられた結果物である現象自体(自然現象、社会現象、意識現象)だけを、知識生産、知識消費の範囲で制限していることが、ハラリさんの思考方式の限界だと言えるでしょう。
編集部:なるほど。書籍に書かれていた「虚構」の通して、 新しい可能性が開けてくるわけですね。そして、歴史の流れは「虚構」を拡大解析をしないまま、人間至上主義、テクノ人間至上主義、データ至上主義という流れ で新しい虚構を作りだそうとしているわけですね。
Noh:はい。先ほど述べたように、 科学は意味価値を放棄して真理を追究しようとしていました。その科学の弱点を補うために登場したのが人間至上主義だったのです。
編集部:具体的には、科学のどんな弱点を補ったのでしょうか?
Noh:はい。科学で分析したすべての情報、データの蓄積がたくさんあるので、このデータをもとに人間についての意味だけではなく、宇宙森羅万象の意味も追求するようになりました。科学が放棄してしまった意味を拡張していくようになるのです。
編集部:なるほど。その人間至上主義について書籍の中で「人間は内なる経験から人生の意味だけではなく、宇宙森羅万象の意味も引き出さないといけない 」また「意味のない世界のために意味を引き出す」という部分がありますが、これだけだとわかるようでわからないのですが、Nohさんは、どのように解析するのでしょうか?
Noh:はい。詳細は、ホモデウスシリーズ2の人間至上主義が生み出した3つの宗派に書いていますのでそちらを参考(https://blog.noh-jesu.com/entry/2019/07/21)にしてもらってここでは簡単 に述べてみます。
人類が幸せになると思って科学では客観的真理の追求に走ったわけですが、その結果、起きてしまったのが戦争です。
そこからポストモダニズムが叫ばれるようになります。それ以前のモダニズムまでのベースである西洋の哲学すべてが人間の5感覚脳の外で追求してきたのに対し、ポストモダニズムになると人間の5感覚を大事にする世界観になってきたのです。
そして、人間の実存を認めるところからロマニズム(ロマン主義)とかも出て来ますし、そのような流れで人間の今ここ、現実の中で生きる意味を強調する人間至上主義に発展していきます。
編集部:なるほど。歴史の流れとともに見ていくと非常にわかりやすいですね。
Noh:そうですね。何事も一部分の解析でとどまるのではなく、一つの流れで整理することが大切です。
編集部:さらにそこからテクノ人間至上主義に進歩していきますね。書籍では「人間を森羅万象の頂点とみなし、人間至上主義の伝統的な価値観に固執するが、ホモ・サピエンスは、歴史的役割を終えた。だからこそ、はるかに優れた人間モデルであるホモ・デウスをうみ出すためにテクノロジーを使う」とあります。ただ、このあたりからその延長線上に人間の希望があるのかと思ってしまいますね。
Noh:そうですね。常に進歩、進歩の方向性で考えているわけですが、そもそもその方向性に進むことで全人類が幸せになるのか、本当に全人類がバージョンアップしていくのかという根本の追求をしないまま 、過去の延長線上で進化しようとしているのが問題ではないでしょうか?
編集部:そう思います。書籍にも出てくる「意識を持たない最も高性能なアルゴリズムに引けを取らず、アップグレードした心身の能力を享受すべきだ。」や「知能が意識から分離しつつあり、意識を持たない知能が急速に発達しているので自分の脳を積極的にアップグレードしなければいけない。」などをみると怖さを感じます。
Noh:そうですね。のちほど述べますが、 テクノ人間至上主義でとどまらずにさらに進歩していこうとしているのが、いまの人類の現在地ですからね。
どうしてこのようになってしまったのか、本来、関心を持たなければならなかった問題意識がどこにあるのかを一言で言うと、「人間の心」を理解しないまま、物質文明の進歩の追求に走ってしまったことだと思います。
編集部:なるほど。その通りだと思います。書籍でも「7万年前、認知革命でサピエンスの心が一変することにより、取るに足らないアフリカの霊長類が世界の支配者となった。そして、この革命は、DNAのいくつかの小さな変化と脳のほんのわずかな配線の変化から生じた。だからこそ、私たちのゲノムをいくつか変更させ、脳の配線を変える第2の認知革命が必要だ」と述べている一方で、「ただ、人間の心の改造はすこぶる複雑で危険であり、さらに心というものを本当に理解していない。」と言い切っています。さらにその状態の例えを次のように述べています。「これは例えれば、初めて船を発明し、地図も目的地もないまま出航する小さな離れ小島の住人のようだと。」 これでは、どこに進めばいいかもわからず、漂流しても当たり前だと思います。
Noh:そうですね。nTech(エヌテック)では宇宙の根源とは何なのかという疑問とつながっている 「人間の心」とは何なのか、そして、第2の認知革命をどのように起こしていけばいいのかを明確に示しているのですが、まず、その前にここでは、人間至上主義とテクノ人間至上主義の違いから見ていきましょう。
編集部:それは助かります。ホモデウスシリーズでは、いろいろな概念が出てくるのですが、どの部分が共通でどこが違うのかが明確に表記されていないので読者の思考が追いつかない部分も多々あると思います。
Noh:はい。『サピエンス全史』『ホモ・デウス』シリーズ合計4冊でいままでの人類歴史を分類し、整理整頓すること自体が非常にすばらしいことですが、分類したことの共通点と違いを知ることを通してより深い理解と洞察ができるようになります。
では、人間至上主義とテクノ人間至上主義の重要なキーワードから見ていきましょう。
人間至上主義は、意識と機能の分離ができていない状態です。すなわち脳と意識が分離されていないのです。それに対し、テクノ人間至上主義は、意識と機能が分離している状態です。
テクノ人間至上主義は、意識と脳を 分離させることを通して、意識価値を低くさせて高性能のエネルギーアルゴリズムとしてみていきます。
だから、脳にチップを入れて脳の配線を変える、そこで第2の認知革命を起こそうとしているわけです。実際に現時点で人間の身体の中にチップが入っている人々がいる話を聞いたことがありませんか?
編集部:あります。なるほど。このように人間至上主義とテクノ人間至上主義を分類していくと今の世の中の流れともつながり、なぜ、このような方向性に進んでいるのかも理解できました。
Noh:はい。本来であれば、人間至上主義に移行する時に、「心とは何か」の答え 。心がわからないということは、心が変化する仕組みである脳神経シナプスの回路も、明確にわかっていないことです。
脳神経シナプスの回路は、脳神経シナプスの流れる経路なので、これが見えていないということは、脳のどこかに刺激が起きた時にそれが次にどこに流れ、さらにどういう流れになるのかが見えていないということです。それだけではなく、多様な刺激が走る道であるエネルギーのアルゴリズムの素材、材料が心でできていることを鮮明にし、心の働きによってエネルギーのアルゴリズムが作られる仕組みを、明らかにさせることができなかったということです。これはすなわち、脳の配線をどのようにチェンジしていけばいいのか 、その方法がまったくわかっていないということです。
ですから、脳神経シナプスをチェンジできずに脳を強化させていくしかありません。そのため、脳にチップまでつけるようになるのですが、これでは心を強化できない状態だから失敗なのです。
逆に脳と心のアンバランスがひどくなり、脳を強化すればするほど、さらにアンバランスが大きくなり、統制が難しい状態になってしまうでしょう。
編集部:なるほど! 心が何なのかがわからないまま行う進歩の先に、どういう未来が待っているのかが非常によくわかりました。
Noh:はい。それだけでとどまらずにさらに進歩していこうという流れから、データ至上主義へと移っていくわけです。
編集部:個人的には、これまでの進歩の過程やこれからの進歩の方向性についても、このままの延長線上で進歩して大丈夫なのかと危険性を感じるのに 、さらに進歩させようとしているわけですね。
Noh:そうですね。そして、ここからがこの記事の冒頭で述べたキーワードである「過去の成功が未来の失敗につながる」の話とつながってくる部分です。
編集部:なるほど。7万年前にホモ・サピエンスは、取るに足らないアフリカの霊長類から世界の覇者になったきっかけが認知革命であり、第2の認知革命を起こそうとしているという部分ですね。
Noh:はい。テクノ人間至上主義をより完璧にしようという流れからデータ至上主義へと移行していくわけですが、データ至上主義は、すべての現象やものの価値もデータ処理にどれだけ寄与するのかを中心に見ていくものです。
編集部:書籍にも科学における大きな流れがぶつかり合って誕生したのがデータ至上主義だ と書かれていました。すなわち、ダーウィンの影響である生命科学での生化学的アルゴリズムと、アラン・チューリングの影響であるコンピュータ科学から電子工学的アルゴリズムの融合だと。
Noh:そうです。そして実は、その2つのアルゴリズムを支えるのが数学法則であり、重要な役割を示していくのが数学(=数学言語)なのです。
編集部:そうですね。そして、その2つを融合させることで動物と機械の隔てる壁を取り払っていける。そして、ゆくゆくは電子工学的アルゴリズムが生科学的アルゴリズムを解読し、それを超えていくだろうと書籍には書かれていました。一見するとよさそうにも見えますよね?
Noh:そうですね。ただ、いまの進歩のままではアンバランスがひどくなり、ホモ・サピエンスが滅亡の流れになってしまうでしょう。そして、今の時代がどういう時代背景だからそのような進化過程を経ていると書かれていましたか?
編集部: 書籍では、これまでとこれからの学習がひっくり返るということが書かれていました。これまでの人類は、データを洗練し情報を得て、その得た情報を洗練し知識に変化させ、その知識を洗練し知恵に昇華させてきたと。それがこれからは、もはや人間が膨大なデータに対応できなくなる(現代でも対応できていない)ので、データを洗練して情報にすることができない。当然、知識や知恵に昇華することもできない。したがって、データ処理を脳の処理能力より優れている電子工学アルゴリズムに任せるべきだと書かれていました。
Noh:そうですね。では、データ至上主義に移行する時代背景が分かった上で、データ至上主義に移行した方がいいという例を書籍から整理していきましょう。
編集部:はい。まず、書かれていたのが「政治家や実業家や一般消費者に革新的なテクノロジーと計り知れない新しい力を与えることを提供」として科学の聖杯を与えることを約束すると書かれていました。
Noh:「音楽学から経済学、果ては生物学に至るまで科学のあらゆる学問領域を統一する、単一の包括的な理論だ」の部分ですね。いまの学問は、どんどん細分化されるので違いだけが強調されてしまい、統合が難しくなってきています。物理学でも統一理論を求めていますが、まだ最終的には解明されていません。
編集部:さらに具体例として「ベートーベンの交響曲第五番と株価バブルとインフレは、3つとも同じ基本概念とツールを使って分析できるデータフローパターンにすぎない」と書かれていました。これは「すべての科学者に共通の言語を与え、学問上の亀裂に橋を架け、学問領域の境界を越えて見識を円滑に伝え広められる。」これによって「音楽学者と経済学者と細胞生物学者がようやく理解しあえるのだ。」と。
Noh:人間は、誰でも心の根深い部分では、交流して共感したいという欲求を持っています。そして、人間が交流する時に必要になるのが言語です。いままでは、暗記を中心にした言語をもとに交流していたのでその欲求を満たすことができなかったのですが、データパターンという概念を作り出すことを通して交流することができるようになったということです。
ただ、データパターンの概念を交流する言語も暗記言語であるため、 本当の意味での交流まではできていません。
そこでnTech(エヌテック)では、真実の世界と虚構の世界の関係性を明らかにするメタ言語を開発しているのです。
編集部:なるほど。人間の隠れた欲求から交流し共感ができる方向性が求められていたわけですね。ただ、真実の世界と交流するには、新しい言語の開発が必要であり、それを可能にする 言語の開発に成功したということですね。
あと、書籍でわかりやすかった例が「資本主義と共産主義の違いは、イデオロギーや倫理上の教養でも政治制度でもなく、本質的には、競合するデータ処理システムだ」の部分です。
Noh:そうですね。「資本主義は分散処理を利用し、共産主義は集中処理に依存している」という部分ですね。
編集部:はい。資本主義は「すべての生産者と消費者を直接結びつけ、自由に情報交換させ、価格等を各自に決定させている」という部分でベーカリーの例がわかりやすかったです。いままで当たり前のように行っていたことでも文字で言語化すると理解が深まり、わかりやすくなったのを覚えています。具体例では、「どのベーカリーも好きなだけパンを作っていいし、いくら高い値段をつけても構わない。消費者も買えるだけ買うこともできれば、他店でも買える。」という部分です。
Noh:さらに視点を大きく広げてみれば、経済全体の話も出ていましたね。
編集部:はい。「もし、投資家であれば、パンの需要増加を予測したら遺伝子操作で収穫量の多い小麦の品種を作り出すバイオテクノロジー企業の株を買う」と。このことにより、そのような企業に資金が流れるから研究が加速し、市場に小麦を 速く多く供給することができる。その結果、パン不足が回避できると。そして、もし、バイオテクノロジー社の大手が間違った理論を採用しても他の競合相手がうまくやるので結果的に全体としてパン不足回避につながる。
Noh:そうですね。書籍にも「データ分析自体とその場での意思決定者が独立はしていても、お互いがつながっていて多くの処理者に分散している」と書かれていましたね。また「株式取引は、人間が創り出したデータ処理システムのうちで最も速く効率がいいものである」とも。いろいろな変化する要素を考慮して取り入れ 、その要素がどこまで影響を及ぼすのか、細かく見ていく必要性がありますからね。
編集部:はい。「株式投資は、世界経済を動かし、地球上で起きること、さらには地球外で起こることさえも、すべて考慮に入れる。成功裏に終わった科学実験、日本の政治スキャンダル、アイスランドでの火山爆発、それに太陽表面での変則的な活動にさえ株価は影響される」と書いてありました。
こうしてみるとデータをもとにその会社の未来や発展を予測し、さらには、市場自体の発展性までも予測することにすでにデータを利用していたのですね。書籍にも「自由市場資本主義者が見えざる手の存在を信じているように 、データ至上主義者はデータフローの見えざる手の存在を信じている。」という部分がなるほどと思いました。
Noh:一見すると複雑に見える模様や形や動きも実は、シンプルなひとつの動きからつくられているものです。パソコンを見ればわかりやすいのですが、静止画の色や模様や形や動画などすべてが「0」と「1」の出力信号によってできています。nTech(エヌテック)では、それをパソコンだけにとどめず、宇宙全体をコンピュータにみたて、PCの時代からPU(Personal Universe)時代が求められているとしています。
編集部:そうですね。パソコンの出力信号の話やPCとPUの比較は非常にわかりやすいと思います。その複雑をシンプルにするということで言えば、書籍に取り上げられていた自家用車の例もなるほどと思いました。
少し長くなるのですが、なるほどと思える部分が多々あったので引用します。
「2010年、世界の自家用車の数は、10憶台を超え、以後も増え続けおり、これにより、ますます広い道路や多くの駐車場を必要とし、地球を汚染し、厖大な資源を浪費している。人々は、車での移動の便利さにすっかり慣れてしまい、バスや電車では我慢できそうにない。ところが、人々が本当に求めているものは、車ではなく移動のしやすさである。データ至上主義者ならこう指摘する。優秀なデータシステムならこの移動のしやすさは、はるかに安く、はるかに効率よくすることを提案できる。」
Noh:そうですね。これは自家用車のことだけではなく、他のことにもあてはまりますね。
編集部:はい。そして、書籍では、ハラリさんの実例を交えてさらにわかりやすく載っていました。「私は車を持っているが、ほとんど駐車場に止めたまま 、普段は、8:04に車に乗り、30分運転して大学に行き、日中はそこに止めておく。そして、18:11に車に戻って家まで30分運転し、それで終わり。一日のうち1時間しか使わない。残りの23時間も維持する必要があるのか?」
そして「コンピュータなら8:04に家を出ることがわかり、近くの車を迎えによこし、時間ぴったりに私を拾うだろう。大学で降ろしたら駐車場で待つ代わりに他の用事に使い、私が18:11ちょうどに門を出ると別の共同利用型の車がやってきて家まで送ってくれる。」
「この方法なら5,000万台分の共同利用型の自動運転車が10憶台分の自家用車にとって代わる。さらにそれだけではなく、道路や橋、トンネル、駐車場もはるかに少ししか必要なくなる。
もちろん、プライバシーを放棄すればの話だが…」
Noh:はい。人類の歴史を時代の変化の流れをみればわかるのですが、 農業時代に代表される王や権力者などの一部の権力者が統治していた時代への反発として個人主義の時代が台頭してきました。
全体として所有する時代から、個人個人が所有する時代への移行です。
さらには、資本主義である経済を回すために消費が叫ばれ、どんどん個人所有が扇動され、モノが溢れかえっているのが現代です。
いまは、その個人主義の時代も限界を迎え、これからどんな未来に向かっていけばいいのか、さまよっている時代ですが、私たちnTech(エヌテック)では、全体主義、個人主義の限界を補っていく共同体主義の時代 というビジョンを掲げています。この話は、次回以降のシリーズで語っていけたらと思っています。
編集部:その話もとても楽しみですね。
Noh:あと、さきほどプライバシーの話が出ていましたが、実は、人間は、機械的条件反射をする存在であり、アルゴリズムから見れば、予測できてしまうものも多々あるのです。まして、インターネットなどを使っていれば、日々の行動や関心ごとや嗜好データなどもどんどん蓄積されていきますから 、予測もかなり正確になってきます。
編集部: 書籍にも「フェイスブックが依頼した最近の研究結果では、人間の性格や気質の判断に関して、当人の友人や親、配偶者と比べてさえ優れていることを示している」とありました。フェイスブックのアルゴリズムは「いいね!」をモニターし、それに基づいて彼らの答えの予測実験を行った。その結果「驚くべきことにアルゴリズムは、同僚の予測の精度を上回るにはわずか10個の「いいね!」しか必要としなかった。」
「そして、友人を上回るためには70個、家族を上回るためには150個、配偶者を上回るためには300個の「いいね!」があれば 十分だった。」
「言い換えれば、もしあなたがフェイスブックで「いいね」を300個クリックしていれば、フェイスブックは、あなたの配偶者よりも正確にあなたの意見や欲望を予測できるのだ。」と書いてありました。
Noh:そうです。認めにくい部分もあるかもしれませんが、本当に人間は、機械的条件反射を繰り返しているのです。自分がどんな条件反射を繰り返しているのかに気がつかないと死ぬまで永遠に繰り返すようになります。そこから抜けだす道が次回以降のシリーズともつながってきますので、その時に詳細を話せたらと思います。
編集部:無意識に行っていることはまず自覚しないと変化することができませんもんね 。nTechを学び、それまで見えていなかったもの(無意識)が自覚(意識化)しだすと自ら変化を作れるようになりますよね。
Noh:はい。ここまで具体例をみてきましたが、いかがですか?
編集部:そうですね。人類の歩んできた道を見てみると全体主義から個人主義になり、限界を感じて新しい道を探している過程でデータ至上主義まで進歩して限界を突破しようという意志 を感じます。ただ、そこに明るい未来は正直、見えていない感じがします。実際に書籍は、警鐘を鳴らしていても打開策は書いていませんでした。
Noh:そうですね。まずは、何度も述べているように自覚がないと変化が始まりません。その意味では、ここまで人類の変化の過程と今後の未来を描いていることは非常にすばらしいことだと思います。ただ、打開策が見つからないのであれば、nTechが足りない部分を補完して、人類がWin できるビジョンを示したいと思っています。
編集部:それを24年前からずっと実践してきたのですよね。 24年前では、なかなかイメージしにくかった未来のことも、いまは 書籍や映画などを通してNohさんの言っていた世界になっていると感じます。
Noh:はい。書籍にも出てきましたが、このままの延長線上で進歩が進むと人間がデータの一部のようになってしまう時代がくると思います。
編集部:書籍にも「データ至上主義者の中にも当然、批判者や異端者がいる。」と書かれていましたが、では、どうすればいいのか?となると答えを出せない状態だと思います。
Noh:人間がデータの一部になってしまうとどうなるのか?情報の一部になるということですから人間(自分)の価値がどんどん低くなってしまいますね。そして、そんな小さな存在である自分に対し、世界、地球、宇宙はあまりに大きすぎる。当然、その中で自分にはどうすることもできないわけですから 、自分をちっぽけな存在とますます思ってしまうでしょう。
これを例えてみましょう。もし、自分の体が人間の体の中の眉毛1本になってしまったとイメージしてみて下さい。そして、体全体が地球だとしましょう。地球(体全体)が成長するからそれに伴って眉毛1本(=自分の身体)も成長する。
その時に存在の意味や価値は感じられますか?
編集部:無理だと思います。なにしろ、吹けば飛ぶような存在ですから。
Noh:そうですね。ホモ・サピエンス(人類)も地球上に最初に誕生した時は、まさに似たような存在でした。それが認知革命によって地球を支配できる存在にまで力をつけることができました。
人類は、第1の認知革命の成功体験から第2の認知革命を起こそうと思い、自ら自身を進歩させてきました。その進歩の方向性が、意識(=心)が何なのかを明確にわからないままの状態で、知識と意識を分離させ、知識のみを進歩させようとしています。
そして、いま、いろいろな限界がやってきているので、さらなる進歩をしようと試みているのが現代です。
実は、この進歩によっていま、ホモ・サピエンスが支配力を喪失しようとしているのです。
編集部:なるほど。これが「過去の成功が未来の失敗につながる」ということなのですね。書籍にもはっきりと「この任務(データ処理の創造)が達成されたらホモ・サピエンスは消滅する。」と書かれていますね。
Noh:そうです。さらにそれだけではなく、いままでの人類の進歩を支えてきた学問の王様である数学言語にも限界があり、その限界を補わないまま進歩し続けてきたこと の問題も大きいのです。
編集部:たしかに限界を補わないままで進歩を追求したのであれば、いずれどこかで必ず限界がくるわけで、 それがまさに現代だというわけですね。
Noh:はい。そして、今シリーズをここまで読んでみても明確にすっきりせず、なんとなくもやもやしている読者もいるかもしれません。それがなぜなのか?は次の例題で理解できると思います。
アインシュタイン曰く、地球を1時間以内に救済しないと地球が破滅してしまうという問題が発生したときに 、アインシュタインは、「 真の問題を発見するためだけ 」と言っていました。
世の中の大多数の人は、真の問題を発見しようとせず、あるいは意識さえせずに、目の前の問題解決策探しにばかり意識がいき、右往左往して、結局、自分で自分自身を訳がわからない環境においてしまうのです。
それに対し、ユヴァル・ノア・ハラリさんは、いままで誰もやったことがない人類歴史の整理にかなり膨大な知識と文献データを使い、その55分の真の問題を発見するように全人類を誘導しました。
これは、非常にすばらしい功績だと思いますし、全世界で1200万部を超える大ベストセラーになっている理由は、そこにあるのでないかと思います。
ただ、その真の問題が何なのかを明確に整理できていないので全人類に問題意識を投げかけ、みんなで討論していきましょうという形でしか示せなかったのです。
問題意識の共有は、とても素晴らしいことですが、何について討論していけばいいのか、その真の問題が明確に整理できていません。
真の問題が明確に整理できていないので、当然、その解決策が何なのか、そのビジョンも提案できていないのです。
これが『サピエンス全史』、『ホモ・デウス』シリーズ合計4冊の限界です。
続くこのシリーズでは、足りない重要なキーワード2つを明確にして 、この限界に対するビジョンを提案してみたいと思います。
編集部: それは、とても楽しみですね!今シリーズまでは、真の問題の整理だったので 、次回からがいよいよ真の問題の明確化と解決策になるということですね。今回も、貴重な話をどうもありがとうございました。
Noh:ありがとうございました。
いかがでしたか?
今回は「地球の覇者となったホモ・サピエンスが、その支配力を喪失していくプロセスについて」の内容でした。
シリーズ第4弾では「ホモ・サピエンスが支配力を失った後、どんな人類が登場するのか?」をテーマにnTechならではの重要なキーワードも明確にしながら希望の未来もお届けしたいと思います。
どうぞ、次回もお楽しみに!!
(編集部:中田健一)
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