2019.08.04 映画・本解釈

マルクス・ガブリエルの観る世界観と、そこに描かれていないその先の人類の未来

こんにちは。Noh Jesuオフィシャルブログ編集部です。

「平成」から「令和」に日本の元号が変わり、新しい時代が開かれ、日本の未来、そして “新しい時代の幸せのカタチ”はどのように変化していくのでしょうか。

前シリーズは書籍『サピエンス全史』『ホモ・デウス』を通じ、NohさんにnTechエヌテック(認識技術)で解析していただきましたが、ビッグデータもさることながら、ビッグヒストリーをテーマとした書籍がベストセラーになり、世界全体が時代の変動を肌で感じ、「人類が向かうNextステージ」に関心が高まっています。

1万部売れる新刊本が1%にも満たない中、哲学書の分野で、しかも3万部発行という世界的ベストセラーの偉業が成し遂げられ、彗星のごとく登場した「哲学界のロックスター」ドイツの天才哲学者:マルクス・ガブリエル、そして著書『なぜ世界は存在しないのか』。

Nohさんが、23年前から一貫して「自分と自分の宇宙は実在しない」と言い続ける世界観と、マルクス・ガブリエル氏の世界観、そして「世界が実在しない」その先の人間の未来は、一体どんな未来なのでしょうか。
マルクス・ガブリエル氏の著書、『なぜ世界は存在しないのか』をテーマに、今後、日本や世界がどのような未来へと舵を切ったらいいのか、Nohさんにお話をうかがってみたいと思います。

広くて深い哲学の世界、彼が云う「新しい実在論」が指し示す人間の“未来のカタチ”を、みなさんと一緒にひも解いていけたら幸いです。

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編集部
Nohさん、本日もどうぞよろしくお願いします。
Noh
よろしくお願いいたします。
編集部
最初に、マルクス・ガブリエル氏(以下、ガブリエル氏)が書かれた本もですが、哲学書はかなり独特な言い回しや二重否定などの難しい表現が多用され、常日頃、実用書に慣れている私たちは、文字や文体にかなり翻弄されるのではないかと思いました。

時代も令和の時代になりましたが、これも日本文化の直接的な表現を避ける“相手を傷つけたくない配慮の心”と重なる感じがしました。

Noh
そうですね。
日本は、一番深い心の世界を、日常生活で感覚的に使う文化があります。

日本には、日本の哲学がしっかりとあります。
それが近年、“COOL JAPAN”という言葉で表現されていますね。

エントロピー0ゼロのCOOLな心の状態になれる日本だからこそ、多様な熱さに自由自在に合わせ、また、ずっと熱いまま、ずっと冷めたままという訳でもなく、統制可能な柔らかさや熱を持つCOOL。
(詳しくは、ブログ「令和という新元号に寄せてシリーズ⑥エントロピー・ゼロのCOOL JAPANの魅力を発信し新時代を拓こう!」をご参照ください)

日本人のみなさんはピンとこないかもしれませんが、日本の独特な文化は、海を越えた国々から見ると、神秘にあふれとても魅力的ですし、日本という国の信用度はかなり高いものがあります。

例えば、日本国のパスポートを持っていれば、190あまりの国や地域へビザがなくても渡航することができるように、世界的信用度が最も高い国と国民性を持っているのです。

そのことからもわかるように、今回、日本が令和の時代を迎え、COOL JAPANののぼりを立てたということは、世界にとっても意味は大きく、75億人をCOOLに戻し、世界の先頭に立ってリードしていく役割が日本にある、という意味に他ならないのです。

すべてを1点に溶かし融合させてしまう、究極の特異点である日本。

日本の和の悟りこそ、究極のCOOL、究極の哲学と言えるのではないでしょうか。

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編集部
なるほど。日本には、そのような秘めたパワーがあるということですね。
なかなか自覚しにくいものですが、とても興味深いお話です。

今回のテーマはマルクス・ガブリエル著書『なぜ世界は存在しないのか』になりますが、では哲学書がベストセラーになるというこの時代を、Nohさんはどう思われますか?

Noh
そうですね。
2020年の東京オリンピックを目前にし、働き方のみならず、まさにさまざまなジャンルでのDiversityが求められ、世界的にも多元性、多様性、複雑性、差別性の大きな時代の波が押し寄せてきています。

多様な価値観の中、共通土台がないため、過去のデータや知識、今までの体験や経験が通用せず、自分がどんな現在地なのか、そして向かう方向性もわからない。
そしてさらに、真似るべきモデルも見つからないまま、時の波にただ流され、コミュニケーション障害、関係性構築の欠如、うつ、引きこもり、自殺、衝動的殺人など、現代の縮図が今ここにあります。

多様性の海に放り込まれた人類は、ビッグヒストリーを使って自分の現在地も知りたいし、どこに行けばいいのかも知りたい。
この複雑に絡み合った人間の意識を、どうシンプルに整理をしたらよいのか。

どうすれば全体を見渡し、人生の地図を手に入れることができるのか、という人類の渇望により『サピエンス全史』や『ホモ・デウス』のヒット作が生まれたと思います。

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科学の進歩により、時間がかかる人間の意識のスピードから、時間がかからないエネルギースピードまで、人類は行き着くことができました。
全体像をみるために追求してきましたが、ポストモダンや人間の意識を超えるスピードの量子力学的世界観を持ってしても全体を見渡すことができません。

ではこの限界をどう突破したらいいのか。
果たして、ポストモダニズムの次なるものはどこにあるのか。

方向性を知らないので、そこで人間はその答えを“新しい哲学”に求めたのです。
それが哲学書のベストセラーにつながった、と私はみています。

編集部
なるほど。私たち人間のルーツの探求から、現代、そして未来の方向性への探求が、哲学への道へと駆り立てたという訳ですね。

ここで哲学に馴染みのない方もいらっしゃるかもしれないので、著書の中にもありましたが、時代の変遷を少し振り返ってみましょう。

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編集部
さて。一般的に「世界」と言う単語の世界観としては、国を表現する「World」を指すことが多いのですが、著書の中で、ガブリエル氏は独特な表現をしています。

ガブリエル氏が言う「世界」というのは、宇宙よりも大きな全体のことを表現しているようにも取れますが、彼の世界観についてNohさんは、どのように感じられますか?

Noh
そうですね。
彼は全体観と部分観という意味で、「世界」という表現をしていますね。

全体に自分が含まれた状態では、全体自身を認識することができない、ということを言っています。
つまりは、脳を使って物事を認識している人間にとって、脳も全体の中の一部分となるので、本当の意味での客観的な観点を持つことは人間には不可能だ、ということなのです。

カメラをイメージしてみてください。
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携帯のカメラの機能でもいいですが、カメラで写真を撮りますよね。その時、必ずレンズを通して被写体を見つめ、ある一瞬をキャッチするわけです。
その結果が、写真となって5感の目で確認できる。これは映像も一緒ですよね。

このようにすべての存在は、人間の脳というレンズが認識して決めつけた結果を映し出している虚構・ホログラム。
そこに意味や価値をつけ、映し出された写真が存在を決めつけている。それを彼は“意味の場”と表現していますね

nTechエヌテック(認識技術)では、観点が存在・ホログラムを映し出しているとも表現しています。

ガブリエル氏が言う世界とは、実在のすべてを包括する最大の集合を意味するのだとすれば、実在的視点は際限なく増加するから、そのような“全体の包括認識はできない”ということです。
いつも部分しかとっていないし、誰も全体をとった人がいない。

だから彼は、実在は存在しないと言っています。
今も宇宙はビッグバンしているから加速膨張し、昨日の宇宙より今日の宇宙は大きい、昨日みたAさんの宇宙より今日みたAさんの宇宙の方が大きい。
ですから人間は、誰もが部分しか認識できないということです。

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編集部
なるほど。
今、虚構の話も出ましたが、神を信じる時代から私たち人類はスタートしています。

ガブリエル氏の著書の中にも「宗教の意味」という章もあり、そこで彼は宇宙の無意味さと“神は幻想”と書いています。
本格的な解析は今後のお楽しみにとっておくとして…。

宗教と人類の進化は切っても切れないものですが、哲学をnTechエヌテック(認識技術)の観点から見たら、どう整理できますか?

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Noh
そうですね。
ホモ・サピエンスの時代から、人類の虚構のスタートのスイッチが押されたと言っていいでしょう。

見えない精神や心の世界で人々をまとめ、すべてを動かす中心が神でしたね。
神が絶対的真理となり、人間は神がつくった被造物になるのです。

被造物として固定したらどうなると思いますか?
固定しているものは、動かないでしょ?
なので、人間の進化発達など考えられなかった時代でもあるのです。

人間や社会よりも神の創造目的(FOR)の方が主体で、その神の創造目的に沿っていかに人間が生きるのか。
そして盲目的に信じるパワーでチームプレーをし、ホモ・サピエンスがネアンデルタール人を制圧して、生き残ることができ、そして今の私たちがいます。

そこから、盲目的な世界から合理的な理性へ人類が大きく舵を切りますね。
天が回っているのではなく、地球が回っているのだと、多くの天才科学者たちの命を犠牲にしたり血を流しながら宗教改革を起こし、科学の時代に人類は移行します。

人間と世界が分離して、神が主体から人間が主体へ移動していく。
世界全体が神を中心にしてひとつになっている世界から分離が起き、人間と世界が分離し、人間が分離された世界を変革する主体になりました。

神を信じる時代(FOR)から、人間と科学(力を信じる時代、BY)に移行していくのです。
人間が主体となり、部分と部分の関係性になっていく。そこで観察対象、認識対象が生まれて、人間の主体性、自発性、能動性がどんどん大きくなっていくのです。

神が創った世界は進化発展してはいけなかったけれど、今後は人間が主体になっているので、人間が世界を構造改革し、宗教改革とモダニズムへと人間の意識が移って行き、その流れに名前をつけるとしたら、科学時代(モダニズム)ということですよね。

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編集部
なるほど。時代の変遷や人類の進化とともに、人間の考え方や生活も大きく変化してきたんですね。
時間の流れや人間の生き様と深く密接に関係しているのが、哲学とも言えるかと思います。

神や王が支配していた全体主義などの目的論的世界観から、部分と部分の関係、人と人の関係論的世界観に変わり、盲目的信仰生活に対する批判、反省がおき、科学主義による合理的理性が活躍する時代になります。
そこで第1次世界大戦、第2次世界大戦が起きて、実存主義、ポストモダニズムがブームになった時代がきます。

Nohさんはこの実存主義をどうとらえていますか?

Noh
そうですね。
宗教的真理に失望し、科学的真理に希望を感じた人たちが、こんなひどい世界戦争を経験して客観的真理はないのではないか、と合理的理性を否定するようになりました。
客観的真理を否定し、主観的真理を認め、一人ひとりのロマニズムが意味や価値があるという思いが強くなったのです。

そして客観的真理、普遍的真理より一人ひとりが認識する個別的思考や感情を強調する多元化・多様化を認めるようになりました。

これらの動きは、科学主義、合理的理性が構築した普遍的かつ客観的真理を全部解体させる解体主義のブームにつながりました。
見えない本質より、今、目の前にある現実を大事にしながら、個々の感情を大事にするロマニズム・ポストモダンが大ブームになったのです。

そこで問題は、社会発展、歴史発展の主体までも解体してしまうのが問題だったのです。

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編集部
進化発展のイメージが不可能だった宗教の生き方から、せっかく人間が主体になったのに、実在ではなく虚構になったことで、主体そのものの人間を失ってしまうという問題は、どのように克服しようとするのですか?
Noh
そうですね。神、人間の次の新しい主体として、構造を登場させるポスト構造主義が誕生しました。
社会発展、歴史発展の主体が見えない構造によって起きるという思考方式が当たり前になり、構造改革という単語が流行る時代がありました。

しかし構造主義は、多様で激しい変化を説明できず、ポスト構造主義にくると歴史発展が構造ではなく、人と人の相互信頼関係を主体としてとらえるようになりました。
相互信頼関係によって創られた新しい価値により、今までの脈略をつなぎ再構築、再解析する構成主義がブームになってきます。

ですから最先端の価値、技術による今までの再解析も可能にさせる構成主義が、今、この時代でメジャーになっています。

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編集部
なるほど。だから今の技術の暴走を止めることができず、全体の方向性が統制できなくてさまよっていますね。
なぜ、今は一人ひとりが哲学者にならないといけないのかがわかります。

Nohさんは、一連の思考方式の変化にどんな問題点を感じていますか?
またガブリエル氏は「新実在論」として、

“相対主義は真実にはならず、人間が意味をつけたものは存在するが「世界」は存在しない”と表現しています。
最後は、固定された“「全体」を求めず「部分」にはまらず、考え続けたら新しい思考が生まれる”、と『新実在論』のその先の未来を結んでいますが、どんな新しい思考が生まれてくるのか気になるところです。
Nohさんはどう思われますか?
Noh
そうですね。
一人ひとりの宇宙、世界、環境、状況を大事にする実在主義的動きに移動できているのはよかったと思います。
一人ひとりの無限大の可能性をいかすことはとても大事だと思うので。

しかし、一人ひとりの宇宙を大統合させるための解体を完全にさせる必要がありますが、解体方式、解体の主体を発見、否定することができないことが残念なことです。

中途半端な言語分析に留まり、メタ言語の創造まで前進することができず、社会発展、歴史発展の主体を構造、または相互信頼関係に移動させたことは、哲学が自ら自分のポジションを放棄したとも言えます。
また哲学の機能である、全体を一つに集中して方向性を知らせる機能を、最先端科学の量子力学などにパスしたような気もしています。

ガブリエル氏の新実在論は、その科学にパスした哲学の機能を取り戻す運動だと理解できますね。

人間がどんなに全体を認識しようとしても、その全体は全体ではなくなり部分になります。
なぜなら宇宙は、終わりなくビッグバンをしているからです。

新実在論を主義主張するガブリエル氏は、神が主体から人間が主体になり構造が主体になり、次の本物の主体につながる新実在論を認識できる、勇気を持った人だと思っています。

部分の変化と全体の変化を成り立たせる完全循環のイメージをnTechエヌテック(認識技術)では、源泉的動きとして明確に規定しています。
AIの無用者階級の危機と人間の尊厳、アイデンティティの危機を解決するために新しい主体を鮮明に認識すること、そして尊厳時代を具現化するために、nTechエヌテック(認識技術)は24年間頑張っています。

虚構の時代が終わり、真実の時代が始まります。
これを新実在論とともに令和維新の幟がたって世界に広がっていくことを期待します。

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編集部
本当にそうなったらいいですね。
日本の文化文明が世界に貢献できる時がくると確信していました。
時代の大転換が起こるこのタイミングに居合すことができ、私もとても幸運に思います。

さて、著書全体を次のようなテーマでより細かく整理整頓することにチャレンジしてみたいと思います。

  1. モダニズム→ポストモダニズム/構築主義→新実在論、と人間の意識の変化の背景に隠れている人間の欲望(ニーズ)とは何なのか?
  2. 共通して「世界が存在しない」と言うガブリエル氏とnTechエヌテック(認識技術)。なぜ「世界が存在しない」と言い切れるのか、またその根拠は何なのか?
  3. 世界が存在しないとしたら、私たちが生きているこのホログラムの世界(虚構)をなぜ人間は必要としたのか?
  4. 宗教の限界と人類が科学の未来に何をかけたのか?
    また宗教は、何によって長い年月人々を魅了し続け、そして何が超えられなかったのか?
  5. 著書【なぜ世界は存在しないのか】を通して、ガブリエル氏が伝えたかったこととは?また、著書には書かれていないその先の人間の未来とは?
各テーマに分けて、ポイントを押さえながら次回以降、順を追って詳しくお伝えしていきます。

世界も宇宙も、本当はないと言われたその先。
歴史とともに難しく感じた哲学の世界から、人類が向かう方向が明確になり、希望の灯が見えるようで、この先がとても楽しみです。

本日はありがとうございました。

(編集部:秋葉のり子)

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